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「侯爵夫人さま、すべて順調でございます」「私の兵隊さん」 [音楽]

シャンソンの歌詞は、物語性があってドラマ仕立てになっているものも多く、つい当時の世相に思いをはせたり、引き込まれてしまうようなものも多いです。
まるで一つの短い小話やドラマを観ているようでもあります。

1936年の「侯爵夫人さま、すべて順調でございます」は、レイ・ヴァンチュラと彼のコレジアン(仲間たち)が
ヒットさせました。
侯爵夫人が旅先から留守宅へ電話をかけて尋ねると、召使いは万事好調ですと返事をしますが、実はとんでもない事が起こっていたと言う、ブルジョアに対する痛烈なブラックユーモアとして一世を風靡したそうです。
戦争の嵐が吹き荒れ、不安に怯えながらも、安逸をむさぼる当時の世相が反映されています。





もしもし、ジェームズ!
変わった事はございませんこと?
二週間も留守にしているから
気になって
電話をしてみたんですの
変わったことはございませんこと?

侯爵夫人さま、変わったことなどございませんとも
ご心配には及びません、すべて順調でございます
しかしながら、一応お知らせしたいことが
少し悲しいお話ですが大したことではございません
まあ何と申しますか、些細なことですが
グレーの牝馬が亡くなりました
侯爵夫人さま、それ以外は
ご心配には及びません、すべて順調でございます

もしもし、マルタン!
本当なの?
私の牝馬が亡くなったなんて!
説明して頂戴
あなたは忠実な御者なのだから
一体何が起こったの

侯爵夫人さま、何でもないことでございます
ご心配には及びません、すべて順調でございます
しかしながら、一応お知らせしたいことが
少し悲しいお話ですが大したことではございません
牝馬は残念ながら
火事で亡くなったのでございます
厩舎が燃えてしまいましたので
侯爵夫人さま、それ以外は
ご心配には及びません、すべて順調でございます

もしもし、パスカル!
本当なの?
厩舎が燃えてしまったなんて!
説明して頂戴
あなたは模範的な執事なのだから
一体何が起こったの

侯爵夫人さま、何でもないことでございます
ご心配には及びません、すべて順調でございます
しかしながら、一応お知らせしたいことが
少し悲しいお話ですが大したことではございません
侯爵夫人さま、厩舎が燃えてたと申しましたが
お城が火事に遭ってしまったからなのでございます
侯爵夫人さま、それ以外は
ご心配には及びません、すべて順調でございます

もしもし、リュカ!
本当なの?
お城が燃えてなくなってしまったなんて!
説明して頂戴
腰が抜けそうだわ
一体何が起こったの

侯爵夫人さま、実はですね
公爵さまがご破産なさいまして
その知らせに動転したあと正気にお戻りになり
その途端に命を絶ってしまわれました
倒れられたときに
ろうそくをみなひっくり返されましたので
お城は火に包まれたのでございます
火はあっという間にまわったのでございます
風も強うございました
厩舎まで燃え広がるのも早うございました
牝馬を助ける術もなく
亡くなるのを見ているほかになかったのでございます
侯爵夫人さま、それ以外は
ご心配には及びません、すべて順調でございます



「私の兵隊さん」は、1936年にマリー・デュバが創唱。
無名時代のエディット・ピアフを支えたレイモン・アッソが作詞、ピアフの親友だったマルグリット・モノーが作曲した歌。
一夜の恋で男性を愛してしまった、切ない女性の心を描いている反戦のドラマです。

戦争により愛する人を兵隊に取られ夫や恋人などを失い、失意のどん底で悲しみにくれた女性は大変多かったでしょう。
30年代40年代のシャンソンには、そういった心境を歌うものも多くみられます。
戦争から帰ったら2人でお店を持とうと約束していたのに、愛する人は帰ってこなかった、といった内容の「アコーディオン弾き」、その他にも、「今宵ただひとり」、「待ちましょう」など。。

別れ別れになった悲しみや傷を抱えた辛さを、このような歌によって共鳴し、分かち合っていたと思います。
歌にはそういった力があり、人々は癒されていたのではないでしょうか。





彼はとても澄んだ大きな眼をしていた
その眼は時々きらっと光った
雷雨の空に稲妻が走るように
彼は体中に刺青をしていた
その意味は私にはよく判らなかったけれど
彼の首の所には、<見られず、捕まらず>
心臓の所には、<誰も>
右腕には一言、<よく考えよ>と彫ってあった

私は彼の名前も何も知らない
彼は一晩中私を愛してくれたけれど
私の外人部隊の兵士は
彼は、私を運命に任せたまま
出撃して行った、その朝
まばゆく晴れたその朝
彼はすらりとして、美しかった
彼は熱い砂の、いい匂いがした
私の外人部隊の兵士は
彼の額に陽があたって
そのブロンドの髪が
輝いていた

幸福は失われ、去ってしまった
私はいつも、あの夜のことを考える
おそろしい絶望が私の心をむしばむ
私はずいぶん泣き、そして思う
彼が私の胸にいたとき
幸福だと叫べばよかったと
けれど彼には何も言えなかったのだ

彼は砂漠で発見された
彼のあの美しい眼を見開いたまま
空には雲が過ぎて行った
彼は刺青を見せてくれた
ほほえみながら、話してくれた
首を指して、<見られず、捕まらず>
心臓を指して、ここには<誰も>と
彼は知らなかったのだから、許してあげよう

けれど私は夢見る、運命が
ある晴れた朝、私を連れて行ってくれるのを
私の外人部隊の兵士の所へ
そして私達は二人だけで
どこかのすばらしい国へ行くのだ
光り輝く国へ
彼はすらりとして美しかった
彼は熱い砂の下に埋められた
私の外人部隊の兵士は
彼の額に陽があたって
そのブロンドの髪が
輝いていたのに



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キョウコ

ままみさんこんにちは!

シャンソンって「侯爵夫人さま、すべて順調でございます」のような曲調もあるのですね。

勝手なイメージとしては美輪さんの影響が強烈なせいか(笑)「私の兵隊さん」みたいな曲調のものだと思っていました。

歌によって普通では語れない心の声をみなで共有し、受け入れて癒していく・・・。
音楽って海みたいですね。
by キョウコ (2012-08-15 12:47) 

ままみ

キョウコさん、コメントをありがとうございます!

そうなんですよ。
フランスの歌謡曲全般をシャンソンと言うようですので、やはり様々な曲調があります。
年代によっても違いますし、私の好みから言えば60年代以降のメランコリック過ぎるメロディのものは、全く受け付けられない感じになってしまうんですが・・・^^;;

シャンソンと言えば、やはり美輪さんというイメージですよね。
「毛皮のマリー」などの歌詞も、毛皮のコートに目がくらみ、真心からの恋をしないで浮ついた生活を送ったあげく、街の女に落ちぶれて昔を懐かしむ、といったストーリーですし、小話的な歌詞が多いので、シャンソンを聴く時は、是非歌詞の面白さも味わうと楽しめると思います。

音楽は海のよう、とは素敵ですね!
海は、穢れを浄化する作用があり、音楽もまた、傷ついた心を昇華してくれるものですね。
そう言えば、どちらも海王星の意味する事象でしたね。
海は、人間が勝手に投げかけた感情も黙って受け入れ、飲み込み、音楽もまた、海のように広大で懐深く、自由に漂っていられる世界だと思います。


by ままみ (2012-08-16 00:31) 

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