「メニルモンタン」 シャルル・トレネー

メニルモンタンは、パリ東北部の労働者街で、世界的なエンターテイナーとして有名なモーリス・シュヴァリエの生まれた所。
これはシャルル・トレネーが、自作の「喜びあり」を創唱してくれたシュバリエへの感謝をこめて、彼に捧げた歌です。





メニルモンタン、もちろんですとも、マダム
そこに僕の心は残してあるんです
そこに会いにくるんです、僕の魂と
僕の全ての熱情と
僕の全ての幸福に会いに・・・
僕の小さな教会にまた会うと
にぎやかに結婚式の行列が通る教会に会うと
僕の住んでいた古い灰色の家にまた会うと
そよかぜさえも
昔を語りかける家に会うと
それらは僕に話してくれるのです
昔と同じように
美しい物語を
過ぎ去った美しい日々がよみがえります
逢いびきしたひととき
あの音楽
夢みる瞳、あのロマンスが、全部
あの詩的で感動的なラヴ・ロマンスが、全部
メニルモンタン!

おひるになると
またにぎやかな生活が始まります
色々な音が聞こえます
無数に反響して
お針子がスナックでおひるを食べ
受付嬢は
新聞を読みます
ここに、緑色の塗った鉄の柵
ここに開いた扉
それはちょっときしんで<今日は、今日は
じゃ君は帰って楽しんだんだね>と言います

僕の小さな駅にまた会うと
どの電車も楽しげに発車して行く駅に会うと
僕はその騒音の中に聞くのです
ふしぎな言葉を
別れの言葉を
僕は詩人じゃないけれど
でも感動してしまうのです
それに僕の頭の中には
決して消えない思い出があるのです
冬のある晩のこと
音楽
ママ、あなたのやさしい眼
何と美しい愛の物語だろう、詩的な
そして感動的な
メニルモンタン!



「わが愛するパリ」 モーリス・シュヴァリエ

彼を主役にして、1929年にハリウッドで製作された「ラヴ・パレード」の主題歌。
トレードマークはカンカン帽と蝶ネクタイ。
シュヴァリエは、フランス、アメリカをまたにかけて活躍したエンターティナーです。
貧民街に生まれ苦労が絶えなかったそうですが、10歳の頃から芸人としてデビューし、明るい歌声を振りまいていました。
10代の終わりには毎夜、舞台演奏が行われるフォリーベルジェールの舞台にも立ち、大戦にも従軍しましたが、カムバックしたあとは名声が海外にまで及び、ハリウッドからも熱いラブコール。
数々の映画に出演しました。

映画「ザッツ・エンタテインメント」シリーズの中で観るシュヴァリエは、やはり屈託のない笑顔と、いたずらっ子のようなまなざしで、魅了されてしまいます。
映画の中の彼は、粋で陽気なこれぞパリっ子、もっと人生を楽しもうよ!と微笑みかけているようです。





ああ、僕のパリ、理想の都市よ
今夜ここを出発しなければならない
さらば、僕の美しい首都よ
そうじゃない、また逢う日まで

パリ、お前を愛してる
愛してる、愛してる
お前に陶酔している
愛人と同じように
お前は僕をすぐに忘れてしまうだろうが
僕の方はお前と別れるのが辛いんだ
お前にこう言えるよ
お前の微笑が
僕の魂を奪ってしまったと
まるで女のように奪ってしまったと
僕の心の全ては永遠にお前のものだ
パリ、お前を愛してる、そうだ心から

パリ、お前を愛してる、愛してる
愛してる、愛してる
判っておくれ
愛してると言っているんだ
ほら
数多くの女たちを愛したけれど
彼女達は僕をすぐに忘れてしまうだろう
だが、僕のほうは彼女達の接吻を
長い間思い出すことだろう
次々と
金髪や栗色の毛の女達が
僕に言葉にあらわせない
数知れぬ陶酔を味わわせてくれた
僕は永遠にお前のものだと誓うよ
パリ、どんなに心からお前を愛している事か