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がんについて [雑記]

日本人は2人に一人ががんになり、3人に一人ががんで亡くなると言う、がん大国です。
にもかかわらず検診率は半分にも満たない事から、がんに対する意識はあまり高いとは言えず、それはどこか他人事と言う気持ちがあるからではないかと思います。
また、がんイコール死の病という認識から、どこか見ないで済ませたい、避けてしまいたいという気持ちもあるでしょう。

私も、父親が進行した胃がんになって初めて、予防も含め知っておく事の大切さ、普段、健康であっても、自覚症状がなくても、検診を定期的に行う事の大切さを知り、父は身を持って教えてくれたと思います。

健康への意識が高い方にとって、今さら?と思われるかも知れませんが、がんとは何か、どのようにしたら防げる確率が高くなるか、がんに対し関心を持ち、知って頂きたいです。
生涯でなる確率は二分の一、自分は大丈夫などと決して言えない病です。
万一なったとしても、それを受け入れ、最善を尽くす事が大事。
敵と戦うには、まず、敵の性質を知る事から。
慌てず騒がず対処するため、あらかじめ予習をし、知識を持っていれば余裕も生まれます。
がんに対して特別な病と言う意識は捨てて、是非、皆様も正しい知識を取り入れて下さい。
中川恵一先生の本などは、とても読みやすく分かりやすかったので、私も理解が深まりました。
そこで得た知識など、少し覚書させて頂きます。


まず、2人に一人ががんになると言う数字は、高齢者になると罹患率が急激に増えてくるため。
がんは細胞の老化現象とも言え、平均寿命が世界一の日本だからこそ増えた、人生のトータルで考えれば決して珍しくない、ありふれた病気です。

昔、日本人の死亡原因の1位は結核でしたが、抗生物質のお陰で激減、次に脳卒中が1位になり、栄養状態が良くなって血管のもろさがカバーされると、1980年代からはがんがトップになっています。
団塊の世代とそれ以前の方々の幼少時には、冷蔵庫が普及しておらず、衛生状態があまり良いとは言えない環境で育ち、ピロリ菌が定着していたり、また、塩辛い食事習慣を持つなどで、胃がんにかかりやすい世代でした。
時代が進み、食生活が欧米化すると、動物性脂肪の過剰摂取、運動不足などから、大腸がん、前立腺がん、乳がんなどが増えてきました。

がんは遺伝すると言われますが、がんを抑える遺伝子に異常があり、それが受け継がれると家族性腫瘍となる様です。
しかし、それはがんの中でも5%との事。
なので、大部分のがんは遺伝ではなく、生活習慣に拠るものだそうです。
家系にがんの人はいないから大丈夫、などと決して思わないで下さい。
父も、祖父が倒れた原因の脳溢血の方ばかり気を付けていたので、がんへの意識が抜け落ちていたのです。

がんになる原因の多くは、喫煙による有害物質が最も多く、世界からタバコが無くなれば、がんは2割減ると言われています。
そして、飲酒や食生活、運動習慣などの生活習慣と続きますが、どんなに気を付けていても、なる時にはなってしまいます。
しかし、気を付けている人とそうでない人を比べれば雲泥の差であり、やはり生活習慣を整える事で予防が出来る病気なのです。

がんは、恐ろしい病には違いありませんが、元々は、細胞分裂のコピーミスの出来損ないです。
寝ても覚めても、日々、免疫細胞が抹消してくれるのですが、自分のDNAを持った細胞なので、異物として判断し難く、見過ごされやすい面があるのです。
歳を取る程、細胞分裂は繰り返されて行きますが、その度にDNAの傷は蓄積して行き、さらに免疫の働きは衰えて行く一方。
長生きすればするほどがんは増えて行くのです。

「はたらく細胞」は、とても大好きなアニメですが、この世界(生命)の平和と秩序を守るため、役割を持ったそれぞれの細胞達が、懸命に使命を果たそうとする姿はとても感動的で、愛おしく、もっと細胞達の住むこの世界(身体)を大切にして行きたい、と思わされる漫画です。
がんからすれば、「がん細胞」の回で擬人化したがんが言っていた様に、僕はただ生まれてきただけなのに、なぜ殺されなきゃならないんだ!と言う思いかも知れません。
しかし無秩序に広がり、増殖し続けるがん細胞は、生命の維持を妨げ、破壊するだけの敵。
免疫細胞と、激しい戦いを繰り広げます。

私達の細胞は、新陳代謝によって1~2%の細胞が毎日死んでゆき、その分、新しく分裂し埋め合わせをしてくれていますが、受精卵から出発して約50回分裂すると、それ以上は分裂しなくなります。
人を含めた多細胞生物のDNAは、ひもの様な形をし、端っこ(テメロア)があります。
分裂の度に、テメロアは複製できないので短くなって行き、通常の細胞は約50回複製すると、帯が短くなり、これ以上は無理と言う所まで来て限度となるのです。
私達に寿命があるのはそのためで、何の病気にもならなくても大体120歳ぐらいが最大の寿命と言われています。

しかし次に命を繋ぐ、精子と卵子が結びついて減数分裂した生殖細胞は、テメロアを修復する酵素によって、分裂を繰り返してもテメロアがリセットされ、またゼロからのスタートになるそうです。
個体としての死を運命付けられた私達ですが、性を持つ事で、永遠に多様な遺伝子を繋いで行ける仕組みを持っているのです。

一方、大腸菌の様に、環境さえ整っていれば無限に増殖する生物のDNAは、輪っかになっていて終わりがありません。
不死細胞と言われているがん細胞にも果てがありません。
プールに広がる大腸菌と同じように、環境さえ整っていれば、いつまでも増殖を繰り返します。

がん細胞はもともと体の細胞ですから、分裂回数に限度があるはずなのですが、生殖細胞と同様テメロアを元に戻す事が出来るのだそうです。
世界中で、がんの研究に使われているヒーラ細胞は、米国のヘンリエッタ・ラックスさんの子宮頸がんから採取されたもので、亡くなられてから70年近く経ってもヒーラ細胞は生きています。

私達の細胞は本来、一つの村の様に秩序を乱さず、個々の受け持ちを守って、協調し合って生きており、時に自分が全体のために不要になると、自分で自分を殺す事もします。(おたまじゃくしのしっぽなど)
多細胞から成る生き物は、不都合な細胞なら死ぬ仕組みも組み込まれているのです。

地球に初めて誕生した生物は、無限に増殖し続ける不死でした。
全体のために死ぬと言う機能は、後から付け加えられたもの。
DNAの死ぬ機能が、なんらかの理由で傷がつき壊れてしまった、栄養がある限り生き続ける不老不死の細胞、それががんです。
こういった事から人類にとって、がんは、先祖返りとも言われています。

がんが進行して命を落とす大きな理由は、がん細胞が、正常な細胞の分まで栄養を奪って衰弱するためです。
がんは分裂するスピードが速く、大量のエネルギーを必要とするため、患者さんは必ず痩せて行きます。
そして、さらに栄養が取り込める場所へと新天地を求め、移転して行きます。
やがて塊になると、他の臓器の機能を阻害するようになります。
決まりを守らないがん細胞は、無秩序に増殖しながら、勝手に移動し、どこまでも身体を破壊して行くのです。
それによって身体が死んでしまえば、がん細胞も一緒に共倒れになると言うのに・・・。
これは、自然破壊によって地球の循環機能が失われた時に、自分達も自滅すると言う、人類の成り行きの様です。

人類は、地球上のどの生物よりも脳が発達したおかげで、他を凌駕し、生き物の頂点に君臨しています。
けれど、欲望や都合を優先し、必要以上にエネルギーを消費し、自然を破壊して行く。
温暖化と異常気象を作ったのは人間の所業ですし、私達は、涼しい部屋で快適に過ごしているけれど、そのツケを他の生き物達が負って、逃げ場がない暑さの中、命からがらの状況で生き延びていると思います。
人間に生まれて申し訳ない気持ちにもなります。
時を経て、取り返しがつかない所まで行った時に、人類は地球と共倒れになるがん細胞だったと気付く事になるのでしょうか。

1個のがん細胞から、発見できる大きさになるまでには10年~20年かかると言われていますが、その後は雪だるま式に大きくなって行きます。
初期には自覚症状などありません。
痛みを感じた時にはもう手遅れの事が多いのです。
自分は元気と思う時に検診に行っておく事が何より大切です。
私も初めて胃カメラ検査に行ってきましたが、麻酔で眠っている間に検査して頂けたので、苦痛はほとんど感じませんでした。
こういった方法もあるので、是非、気軽に受けて下さい。

中川恵一先生は、本の中で、進行したがんは鳥かごから逃げ出した鳥に例えています。
早期がんの治療は、鳥かごの中の鳥を捕まえるようなもの、さほど難しくない。
ある程度進行してしまうと、今度は部屋の中にまで飛びまわってしまっている状態で、捕まえようと思えば捕まえられる。
しかし、他の臓器に移転してしまっているがんは、鳥が部屋の外へ飛んでしまった状態なのだと。
大空へ飛んで行ってしまった鳥を捕まえるのは、容易ではありません。
移転する程のがんは、抗がん剤やあらゆる免疫を潜り抜けて来たがんであり、凶悪化を増し、タチが悪くなっているからです。
しかし、世の中には末期がんからの生還を果たす人もいるので、鳥が自分から鳥かごへ戻る様な奇跡もあると、中川先生は書いておられます。

がんと言っても種類は千差万別、様々なタイプがあり、根治しやすいがん、難治性のがん、ウイルス性のがん(がんそのものがうつる訳ではなく、ウイルスが原因で遺伝子に傷が出来るタイプ)、進行が早いがん、遅いがん、性ホルモン依存型のがんなど。
治療は、手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療などを組み合わせて行い、そして緩和ケアと続きます。
それぞれの性質を見極め、治療する事が大事です。
標準治療は、イコール推奨された最善の治療と言う事。
名前から言うと並みたいなイメージですが、お金を掛ければそれだけ良い治療が出来るというわけではありません。
国立がん研究センターなどの、信頼できるサイトから情報を集め、怪しい民間療法に引っかからない事が大事です。

国立がんセンターは蟹のマークですが、癌の塊は蟹の甲羅の様に固くなるためとの事。
江戸時代では、表面に出ている癌しか診断が付かなかったので、癌と言えば乳癌(乳岩)を指していた様です。
また、徳川家康の死因も胃がんであったとか。
鯛の天ぷらによる食あたりと言う事ですが、食してから数か月も経っている事、食欲不振、胃の辺りが硬かったと言う事から、胃がんであった可能性が高い様です。
がんは昔からあり、古代ギリシャのヒポクラテスはがんをカルキノス(蟹)と呼び、人間の身体の中にハサミを使って侵入し、肉をことごとく食べ尽くしてしまう邪悪な蟹であると考えたらしいです。

悪性腫瘍には、「癌」の様に上皮組織に出来るもの、その他にも骨肉腫や、白血病などもあり、全てを含めた広義の意味で、「がん」と言うのだそうです。
なので、全ての悪性腫瘍を診療の対象としているため、国立がんセンターの「がん」はひらがな表記なのだそうです。

本で読んだ中で、とても良い例えがあったので書かせて頂くと、交通事故で死を避けるには、安全運転とシートベルト着用をする事ですが、これをがんで死なないために例えると、良い生活習慣(安全運転)と、定期的ながん検診(シートベルト着用)が当てはまります。
万一、交通事故に巻き込まれても、シートベルト着用によって助かる確率は格段に高くなります。
がんになったとしても(事故に巻き込まれたとしても)、早期発見によって命を落とさずに済みます。
早期発見で治癒率は9割にも上るからです。
しかしどんなに安全運転を心掛けて、シートベルトを着用しても、巻き添えを食うなど、交通事故死を完全には避ける事は出来ません。
がんも、生活習慣を整えて、検診を怠らなくても、すい臓がんなど発見し難いがんになる事もあり、運だったと言う他はない場合もあります。
それでもこのセットが大切で、命を落とさないためには有効なのです。
食生活と運動習慣などの生活習慣と、定期的ながん検診の二段構えが大切なのです。

がんは、ゆっくり体の機能が落ちて死ぬことが出来る病。
ある程度、死が予見できる病です。
脳卒中や、心筋梗塞と違い、突然死する事はありません。
その間、心行くまでお別れが出来るし、感謝の言葉も伝える事が出来る。
人生の総仕上げ、店じまいも自分の意志で出来る。
悔いのない様に時間を過ごし、人生や死に対して思索を深め、尊厳を失わず死に臨む事が出来る。
中川恵一先生も、本の中で、死ぬならがんが良いと書かれています。

日本人は、死を忌み嫌って、まるでないかの様に避けてしまう傾向があると思います。
私もそうでした。
しかし、今、生きている人もいずれ死にますし、生の数だけ死があって、病気にならなくても死亡率は100%なのです。
死の恐怖を意識すれば怖いかも知れませんが、全て受け入れ、自然の成り行きに任せられるのだとすれば、優しい病だと思います。


父は胃を全摘出来たお陰で、普通の日常を送れるようになりました。
しかし、その後に続く抗がん剤治療は、79歳の身でやはり負担が大きく、だるさと食欲不振で体力が落ちてしまい、計画していた温泉旅行もキャンセルしてしまいました。
生来の我慢強さから元気な顔を見せてくれるものの、大変な状況には違いなく、娘としては日夜、心配が頭を離れません。

親をケアする事は、不思議と自分の癒しに繋がっている事に気付きました。
何か心の根底に温かいものがこみ上げ、満たされる思いがあります。
人間のこの世でのスタートは、何も持たず、何も出来ない赤ちゃんの姿で生まれ、そこから当たり前の様に全てをしてもらい、育ててもらっています。
歳を取ると、成長とは反対に、食事量は減り、少しずつ動けなくなり、寝ている時間も多くなり、そして最後には枯れる様に旅立って行きます。
人間の道行く先は、まるで逆回転を見る様に、最後には赤ちゃんに戻ってしまうのと同じだと思います。
子供は親にケアしてもらい、一人前に育ててもらい、その愛情を忘れず、今度は子供が年老いた親をケアする。
恩返しができる事、優しさをためらいなく発揮できる事、そのため自分も癒される思いがするのかも知れません。
高齢者のがんはありふれた病気、一種の老化現象として認識すれば、あまり深刻にならずにすみます。

遠慮深く、控えめな父なので、悪いね、ありがとね、と気を遣わせてしまう位なのですが、これからも、父が少しでも良い時間を過ごせる様、そして、悲しむ母を少しでも励ませる様、出来る事をして行きたと思っています。



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